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美術展、博物展、神社、旅行、読書、IT関連などの雑感を書いていきます。

柳田國男と南方熊楠 セミナー聴講

鷹楠です。

柳田國男南方熊楠 ~2 人が築いた民俗学の道しるべ。」というセミナーを聴講しました。

 

www.aoyamabc.jp

 

好きな偉人は誰かと聞かれたら、迷わず「南方熊楠」と答える鷹楠です。私のハンドルネームの由来でもあります。

ご存じ無い方のために念のため説明すると、南方 熊楠(みなかた くまぐす)は、明治を生きた 生物学者・民俗学者博物学者・思想家・エコロジストです。

「日本人の可能性の極限」と呼ばれた人で、その生き様・思想・能力・業績は凄まじいです。明治の時代に、西洋の研究者と対等に肩を並べて、科学雑誌『ネイチャー』に50報、『ノーツ・アンド・クエリーズ』に323報の論文が掲載されています。それだけでもう、信じられないくらい凄い。

『ネイチャー』に論文が掲載されるというのは、科学者の夢であり、1報掲載されるだけでたいへんな偉業です。それが50報・・・。もちろん、いまとは掲載基準が違うと思いますが、当時も今も、これだけの論文が掲載された東洋人はいません。

熱心な菌類学者でもあり、収集した標本は6000点を超えます。新種を10種も見つけています。

また、当時としてはまったく新しい概念であるエコロジーについて提唱し、自然を壊す悪因となる神社合祀への反対運動を発起し、何年も根強く続けました。

民俗学の父・柳田國男や、近代日本仏教史を代表する仏教学者・僧侶の土宜法龍などと大量に書簡をやり取りしており、幅広い分野に貢献しています。

まさに、日本人のヒーロー的な人物なわけです。

 

さて、何の話だったっけ・・・

あ、そうだ。うん、その彼が、もうすぐ生誕150年ということで、青山ブックセンターではここ半年ほど、南方熊楠関連セミナーを開催しています。

熊楠研究者の田村義也さんをはじめとして、これまで、詩人の吉増剛造さん、編集者の都築響一さん、熊楠研究者の中沢新一さん、漫画家の辛酸なめ子さんなどを交えた、魅力たっぷりのセミナーが開催されました。

 

そして今回は、柳田國男研究者との対談。

ちょうどいま、千葉の国立歴史民俗博物館(略してレキハクというらしい)で、「柳田國男と考古学」という特別展をやっているらしいです。2016/10/10まで。

なんでも、柳田國男は実は考古学に関心があり(熊楠に対してとても批判的なことを書いたりしていたけど)、収集物もあったとのこと。どんな特別展なのか気になる。

第4展示室 特集展示 「柳田國男と考古学」|プレスリリース|歴博の活動|国立歴史民俗博物館

 

今回のセミナーの内容は、柳田國男および南方熊楠という人物のわかりやすい説明と、二人がどのように接して、意見交換し、お互いの考えを深めていったのかという考察でした。

この対談を聴講して、柳田國男がつくった民俗学という学問について理解が深まりました。

民俗学というと、「お祭りの研究」や「妖怪の研究」といったイメージが強いかもしれませんが、柳田國男が考える民俗学の根底には、次のような想いがあったとのことです。

 

「普通の人が、普通に働いて、考えて、生きてきた様を観察することで、人間について明らかにする。」

 

人を理解することが、民俗学の目的なんですね。なるほど。

歴史の表舞台にでてこない、庶民の文化と歴史を理解するためには、文献に残っていないことを調べる必要あります。そのために、例えばお祭りのしきたりや踊りを注意深く観察したり、「カッパ伝説」などの伝承されている昔話を掘り起こすことが重要になるというわけです。

 

熊楠と柳田の出会いは、熊楠が書いた、山の神に魚のお供えをする慣習についての掲載記事(?)を柳田がみつけたことがはじまりのようです。柳田は、自分も同じことについて以前報告したことがあるという内容とともに、山に住む人についての知見を、熊楠に手紙で求め、そこから書簡のやり取りがはじまっています。

熊楠と柳田はだいぶ考え方の違いがあったようですが、その裏には、柳田が官僚という立場であったことも影響しているみたいでした。

 

今回、セミナーの中でいくつか書籍が紹介されました。下記のものが気になっています。「ノーツ・アンド・クエリーズ」に掲載された熊楠論文の日本語訳!素晴らしい。ただ、もう少し値段が安ければ・・・><

 

www.amazon.co.jp

 

あとこれ。 岡 茂雄 著「本屋風情」(中公文庫) 。

https://www.amazon.co.jp/dp/4122050332

 

柳田がみつけた、熊楠の報告。

・「山神オコゼ魚を好むと云う事」

 『南方随筆』(沖積舎) 、『南方熊楠コレクション〈第2巻〉南方民俗学』 (河出文庫) に収録。

 

 こんなサイトが! オコゼ:山神オコゼ魚を好むと云う事(口語訳1):南方熊楠の随筆

 

特別展「柳田國男と考古学」については、本も出ているようです。読んでみようかな。

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・・・まとまりがないですが、結構長くなってしまったので、今回はこれまで。